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2024年6月19日 07時10分に生成された05時00分のデータです
2024-05-24 09:00:00
<ディスクロージャー&ディスカバリー>認定基準の根拠が不透明なままでは水俣病は終わらない水俣病は発生から70年が経った今も、まだ終わっていない。
熊本県で行われた水俣病の被害者団体と環境大臣の懇談の場で、環境省側が、被害者団体のメンバーの発言中にマイクを切るという対応をしていたことが分かり大きな問題となった。これは伊藤信太郎環境相が謝罪することで一旦は解決したが、そもそもその懇談が何のためのものだったのかまで知る人、あるいは知ろうとする人はあまり多くなかったようだ。日本の高度経済成長の副作用として起きたいわゆる四大公害病の一つである水俣病は、名前こそ広く認知されるようになったが、発生から70年が過ぎようとしている今も、これが未解決の問題であることは意外と知られていない。
第20回のディスクロージャーでは、水俣病の認定問題と情報公開の関係を取り上げた。
水俣病は熊本県水俣湾周辺の新日本窒素肥料(現・チッソ)の工場から海や河川に排出された有機水銀によって汚染された魚介類を食べた住民に、重篤な神経症状を伴う水銀中毒が集団発生した公害病で、1956年に水俣病として正式に認定された。差別を恐れて被害を公表できない人も多くいるため正確な罹患者数は分からないが、現時点で32,752人が水俣病の認定を申請しているのに対し、実際に認定を受けた患者はその7%の2,284人にとどまっている。
これは水俣病以外の公害病や原爆症の認定などをめぐっても同様の問題が起きているが、水俣病の症状が出ている患者が国や県から正式に「水俣病」と認定されるためには、認定基準というものが問題となる。その患者が呈している症状に加えて、住んでいた地域や時期や期間のほか、生活様式なども認定を行う際の判断材料となる。例えばどのくらいの量の魚を食べていたかなどだ。その判断基準から漏れた患者は、明らかに水俣病と思われる症状を呈していても水俣病患者としては認定されず、医療補償などを受けることができない。
非認定となった患者は当然、その決定を不服とするが、そもそもその根拠となる判断基準がどのような議論の末に定められたものなのか、そこに医学的な根拠はあるのかなどを知らなければ、争うこともできない。そこで行政側からそれらの情報が公開される必要がある。しかし、多くの場合、非認定の決定を不服とする患者は、国や県を相手取って裁判などに訴えている場合が多いため、国や県は裁判で不利になりかねない情報を自ら進んで公開しようとはしない。
そこで情報公開法に基づく行政情報の開示請求や非公開となった場合の不服申し立て、そして最後の手段としての情報公開訴訟が重要な役割を担うことになる。
水俣病については、当初1971年に出た事務次官通知に基づいて認定が行われていたが、これが比較的緩いものだったために、認定される患者数が膨大な数に膨れ上がる恐れが出てきた。そこで政府は1977年(昭和52年)に新たな判断基準を設定し、認定のハードルを大幅に上げた。その時に定められた「52年基準」が今も水俣病の認定基準のベースとなっている。
「52年基準」をめぐっては、それを策定するにあたって参照した医学的な資料などの開示を求める請求がなされたが、資料は廃棄済みという理由から開示されなかった。つまり1971年の基準が6年後に厳格化されていたにもかかわらず、そこに医学的な根拠があったのかどうか、またあったとすればそれはどのようなものだったのかを知る手段は封じられていた。
その後1995年には政治決着が図られ、水俣病に認定されないものの、一定の症状を呈している患者に対しては、患者側が申請を取り下げることを条件に一部補償を行う和解が図られたが、それに納得しなかった患者の多くは、和解に同意せず、引き続き水俣病患者としての認定を求めている。
発言中にマイクが切られた懇談会というのは、引き続き水俣病としての認定を求める患者側と政府の間の話し合いの場だったのだ。
補償をできるだけ低く抑えたい行政と、自らには非がないにもかかわらず公害の被害を受け補償を必要としている患者の間に、利害衝突が起きることは避けられないが、それにしても患者からすれば自分を公害の被害者だと認めようとしない基準に正当な根拠があるのかどうかを知る権利くらいはあるはずだ。ところが、水俣病の場合、行政側は情報公開請求に対し、そのような文書は存在しない、あるいは破棄してしまったことなどを理由に、ことごとく開示を拒んでいる。納得できない患者側が多くいるのも当然のことだろう。
せっかく情報公開法や公文書管理法ができても、そもそも行政情報は公共の財産であり、行政機関の私物ではないという民主主義の前提が共有されなければ、これらの法は宝の持ち腐れになる。組織の体質やマインドが変わらないままでは、情報公開法や公文書管理法などが本来の目的を達成することはできない。水俣病の認定をめぐる情報公開のあり方をつぶさに見ていくと、行政が都合の悪い文書は最初から作成しなかったり、早々と破棄してしまうなどの行為が横行しているのが見て取れる。何事も、仏作って魂入れずでは意味がないのだ。
今回は世界的にも有名になった未曽有の公害病である水俣病が、なぜ未だに決着できないでいるのかについて、認定基準をめぐる情報公開という観点から、情報公開クリアリングハウス理事長の三木由希子とジャーナリストの神保哲生が議論した。
(本記事はインターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』の番組紹介です。詳しくは当該番組をご覧ください。)- 15
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2024-03-30 09:00:00
<ディスクロージャー&ディスカバリー>いじめ調査報告書はどこまで公開されるべきか学校で起こるいじめを苦に自死する子どもが、残念ながら後を絶たない。
いじめをめぐっては、いじめの発生を学校ぐるみで隠ぺいしたり、学校がいじめと自死の関係を頑なに認めないなど、当事者やその家族にとってはつらい事態が相次いで起きていることは周知の事実だ。中には学校がいじめを認知していながら適切な対応を取っていなかったり、教員がいじめに加担しているケースなど悪質なものもあるが、その事実が家族にさえ十分に提供されない場合もある。
いじめを原因とする自死事件をきっかけにいじめが社会問題として認知された1985年以降、いじめ対策は制度的には進んできたが、いじめの認知件数は年々増加し、2022年度には681,948件にものぼっている。
このような危機的な状況を受けて、2013年にはいじめ防止推進法が制定され、重大事態と認知されたいじめについては調査報告が法律で義務づけられた。しかし、逆にそのことで調査報告書や調査過程の情報の公開が以前より問題になる事例が増えている。また、いじめを認知した際に学校から教育委員会に出される報告文書の情報公開も、いじめの加害者、被害者双方の個人情報などが多く含まれているため、被害者やその家族の希望とは裏腹に、どこまで情報公開ができるかについては未だに明確な基準が定まっていない状況だ。
いじめの調査報告に関する情報公開は「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」に定められてはいる。しかし、ガイドラインでは「情報公開条例の不開示事由を踏まえて適切に行うこと」とされ、無条件の公開を義務づけているわけではないため、その不開示事由の適用範囲が常に問題になる。しかも、被害者本人が死亡している場合、家族であっても個人情報保護法の壁が立ちはだかる。法定代理人は本人が生きている間は有効だが、死亡した場合は、家族でも他人と同じ扱いになるからだ。家族にも満足な情報が開示されない一方で、調査報告の公開については、「当事者家族の意向」を理由に幅広く黒塗りされたものしか出てこない場合が多く、実際はそれが当事者家族側の意向とは異なる対応だったことが後になって判明する場合も多い。
確かに子どものいじめ問題は情報公開上デリケートな側面があることは間違いない。しかし、それを理由に行政や教育委員会、ひいては学校による隠ぺいや責任逃れを許してはならない。本人や家族の無念を晴らすためにも、また社会として問題の所在を共有するためにも、適切な情報公開は必要だ。
いじめ問題の情報公開について、具体的な事例を参照しながら、情報公開クリアリングハウス理事長の三木由希子とジャーナリストの神保哲生が議論した。
(本記事はインターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』の番組紹介です。詳しくは当該番組をご覧ください。)- 15
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2024-05-01 09:00:00
<ディスクロージャー&ディスカバリー>インカメラのない情報公開訴訟で請求者の前に立ちはだかる「個人情報保護」と「業務への支障」という2つの壁行政に対して公開を請求した情報が不開示となった場合、請求者には2つの選択肢がある。一つは情報公開審査会に審査を請求する方法であり、もう一つが公開拒否の取り消しを求める情報公開訴訟に訴える手だ。行政機関が情報公開を拒否する場合は単に開示を拒否する処分(不開示)の他、文書が存在しないことを理由とする開示拒否(不存在)、文書の有無をも明らかにせずに開示を拒否する存否応答拒否処分などがあるが、いずれの場合も、請求者が非開示処分を不服とした場合、審査会に審査を求めるか、非開示処分を不服として訴訟に訴えるか、あるいはその両方を選択することができる。
情報公開訴訟の件数はそれほど多くはない。国に対しては年間で20~50件程度、自治体を含めても裁判まで発展するケースは少ない。非開示決定に対しては行政救済制度である審査請求が行われることはよくあるが、実際に訴訟にまで至るケースは希といっていい。代理人の引き受け手が少なかったり、訴訟をすることの負担が重いなどが主な理由だが、それでも訴訟に至るケースの中には、請求者の側に情報開示に対する強い思いが込められていたり、開示請求されている情報が社会的に注目を集めるものの場合が多い。
情報公開訴訟の最大の特徴は、不開示となっている情報の内容を知っているのが被告である行政機関だけだという点だ。被告のみが非開示となった情報の中身を把握しており、原告は無論のこと、裁判所もインカメラ審理ができないため、情報の中身がわからないまま裁判が争われることになる。被告である行政は、その情報が情報公開法に定められている非開示情報に当たることを主張するが、原告も裁判官もその主張の妥当性を直接確認することはできないのだ。そのため、被告側に不開示理由の妥当性を立証する責任が課せられることになる。
しかし、行政側が非開示の理由として個人情報の保護を主張した場合、実際の情報の中身がわからないままその主張を切り崩すのは容易ではない。特に行政側が個人情報の保護と、開示されることによって行政の業務に支障をきたすことを理由にあげてきた場合、情報の中身がわからない原告が、同じく情報の中身がわからない裁判所に対して、その主張の不当性を訴えなければならないのだ。
今回は福井県高浜町元助役に関する調査文書情報公開訴訟と、陸上自衛隊北部方面隊所属自衛隊員数文書情報公開訴訟、滋賀県優生保護審査会文書情報公開訴訟の3つの情報公開訴訟を取り上げ、非開示となった情報の公開を求めて訴訟に訴えた場合、どのような審理が行われるのか、インカメラのない裁判にはどのような困難が伴うのか、行政側のどのような主張が情報公開の妨げになっているのかなどを、自身でも多くの情報公開訴訟を提起してきた情報公開クリアリングハウス理事長の三木由希子氏とジャーナリストの神保哲生が議論した。
(本記事はインターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』の番組紹介です。詳しくは当該番組をご覧ください。)- 13
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