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2017-09-01 00:00:00
速水健朗「いまなぜ『独立国論』を語るのか」【独立国論 #3】【2015/11/5収録】 @gotanda6今回は、ついにシリーズ三回目、独立国論の完結編です。これまでは満州国設立と鉄道事故の関係であったり、学生運動、反体制運動といったものが、日本の作家たちにどのような影響を与えたかを皮切りに、映画監督の堤幸彦を語ってみたりと、僕(速水)の趣味性の高い「独立国論」を、ゲンロンカフェという場を借りて、講義という形で行ってきました。最終回は、一度原点に返って、なぜいま、「独立国論」を僕が語ろうとしているのかについて講義してみたいと思います。簡単に言えば、多国籍企業が力を持ち、ネットを得た市民が権力を持つ時代に、これまでどおりに中央集権が機能しなくなる時代が来るのではないかというのが前提です。そうなった場合に、1,地域で独立運動が起こる、これはすでに世界中で起こり始めていること。それ以外、2,民族や土地とは別の新しいコミュニティが「国家的なもの」になり得るような事態が想定できるかもしれない。大きくは、この2つでしょうか。特に、2については、僕の近年の仕事と無関係では無いと思っています。例えば、「都市とショッピングモール」。国家とは違ったレイヤーで世界に広がる共和国的なものを考える。それが東浩紀と僕が挑んだ「モール論」だった気がします。「政治と食」(フード左翼とフード右翼)。このテーマも、国民を分断させるような「思想」として食とその闘争史を遡るという性質のものでした。「フード左翼」という造語までつくったのであれば、なぜ「フード左翼革命」をここで提唱しなかったか、悔やんでいます。ここで語りすぎると本編で語ることがなくなるのでやめておきます。また、この講義日である5日は、僕の誕生日の直前でもあります。ひとつ、誕生日を祝うご祝儀といった気持ちで、お越しいただければさいわいです(←ずうずうしい)。
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2017-08-01 00:00:00
速水健朗「革命とエンタメ。そして、なんとなく堤幸彦論。」【独立国論 #2】【2015/10/29収録】 @gotanda6今回の講義では、創作の原点に革命を抱いている作家たちについて話たいと思います。
僕が昔から好きになる作家には、なにかしらふんわり共通点があるような気がしていました。浮かんでくるのは、矢作俊彦、村上龍、村上春樹、映画監督の川島透なんて名前たち。
矢作俊彦『スズキさんの休息と遍歴―またはかくも誇らかなるドーシーボーの騎行』は、かつて左翼の闘士だった“スズキさん”が、愛車のシトロエン2CVで、旅行に出かける妻を成田空港まで送りに行くという一見ドライブ小説。それがいつしか闘争の現場である成田を通り、彼の闘争を振り返るようなものへと変わっていきます。直接的に革命を描くわけではありませんが、現代からその足跡を眺める旅です。
そのほかの作家については、ゲンロンスクールで話しますが、国家転覆を試みる闘争=革命を孕んだ、またはそれにまつわる小説や映画は数多くあります。
こんなストーリーのお芝居があります。学園闘争の時代、ある高校でバリケード封鎖が敢行され、主人公の高校生は、機動隊が水平発射した催涙弾が頭に当たり意識を失います。その彼が意識を取り戻すのは、30年後。主人公は、47歳のおじさんとして高校に復学し、かつての闘争の空気などみじんも残っていない学園で独り横暴な学園の権力と戦おうとします。革命をモチーフにしたコメディです。
これは『僕たちが好きだった革命』として小説になっており、その作者は鴻上尚史ですが、原案者は堤幸彦です。そう、堤幸彦は『ケイゾク』『TRICK』『SPEC』などのドラマシリーズでおなじみの監督で、僕も好きな作家の1人。映画はいろいろ微妙ではありますが。
今回は、なんとなく堤幸彦とその思想をゴールにしてみたいと思います。『ケイゾク』『TRICK』論が僕にできるかどうかはわかりませんが、堤論はいつかはやってみたいと思っていたとっておきのテーマです(ちなみに僕が一番好きな堤作品は堂本剛君主演の『金田一少年の事件簿』シリーズです。DVD全部持ってます)。
とにかく多作で、しかも『20世紀少年』のようなビッグバジェットのテレビ局制作映画をも手がける存在でもある堤幸彦は、思想のなさそうな作家、つまり1人の作家として作家主義的に論じられない作家の1人です。でも、そんな堤を、今回はあえて作家論として語ってみたいと思います。
堤の最新作『天空の蜂』こそ珍しく「原発」「テロ」を扱った作品ですが、それ以外の堤作品にも共通しているように思われる「革命」「闘争世代」「共産主義の夢」的なものを見出してみる。そして、それは矢作、川島といった作家たちの表現活動と紐付いたものに見えてくる。そんな講義にしたいと思います。今回もこうご期待!
速水健朗
http://genron-cafe.jp/event/20151029/えいた
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